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書いた遠近のリメー

それを猫が知っているとは



「なんだ、そんなことか」
 店内に入り、ジークは注文した麦酒を飲み干すと、あっさりとした口調で言う。エルは自分が散々悩んだだけに、ジークの態度が気に入らない。
「えー、でも、ぼくわからなかったよ。いい葡萄酒を見分ける方法ってあるの?」
 たとえあったとしても、それを猫が知っているとは思えない。ジークはエルを試すように「なんだと思う?」と聞いたdream beauty pro 好唔好
「ええと、匂いかな?」
 適当に思いついた考えを口にしたのだが、ジークは容赦《ようしゃ》なく否定する。
「外れ。商人たちも散々悩んだんだ、どれが出来のいい匂いかなんて猫にわかるわけないだろ。もう少しよく考えてみろ」
「うーん、じゃあ味! 実は猫もこっそりと味見してたんだよ」
「まあ、味見してたっていう部分は正解かもな」
「え、本当に味見してたの!」
 猫がちびちびと葡萄酒を舐《な》める姿を想像し、エルはぽかんと口を開けた。猫も葡萄酒の味がわかるのだろうか。
 ジークは苦笑いを浮かべ、違うとばかりに首を振った。
「そいつは樽の上に乗って、商人たちを威嚇したんだろ。必死にその樽を渡すまいと、全身の毛を逆立てて」
「うんうん」
「そいつはどうしても、その樽の葡萄酒を渡したくなかった。どうしてだと思う?」
「自分で飲みたかったのかな」
「おそらくな」
 でも、現実的に考えれば猫が葡萄酒をひと樽も飲むはずがない。エルはジークの顔をじっと見つめ、やがて降参だとばかりに肩を落とした。多少、不貞腐《ふてくさ》れてもいるdream beauty pro 脫毛
「なんだ、もう諦めたのか」
「だって、猫がお酒を飲むなんて聞いたことないもん」
「ああ。猫は葡萄酒を飲めないだろうな」
 ジークは答えを匂わせているのだが、エルはそれに気付かない。両腕を組んで唸《うな》る。
「じゃあ、飼い主に命じられたんだよ。あの樽は売りたくないから、商人さんたちを引っ掻《か》いてでも守れって」
「売りたくないなら、売り物にしなければいいだけの話だろ。それに、猫がどうやって樽を守るっていうんだ。つまみ出されるのがおちだ」
「あ、そっか」
 むむむ、とエルは眉間のしわを深くする。ジークはあえて答えを言わず、エルに当てさせようと助け舟を出す。
「そもそも、そいつは商人たちが樽を買って行くと、どうして知ることができたんだ。ただ話し合っていただけなんだろ?」
「え、そうだけど……猫って人の言葉はわかんないよね」
 自分が知らないだけで、猫が喋《しゃべ》れたらどうしよう、とエルは考え込んでしまった。だが、普通に考えれば、猫は言葉を話すことも解することもできない。
「んんん? でも、言葉がわからないと商人さんたちがなにをしに来たのか、知ることはできないよね。でも……」
 人の言葉を解する猫。
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