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書いた遠近のリメー

建設的とはいえないん


「そりゃ、ブス放し飼いにしといて法治国家もあったもんじゃねえが、法の網かいくぐってブスを殺していいってことにはなんねえんだぞ。ブスの存在自体が罪だという、法のあるべき姿にたちもどるには、善良な市民の忍耐と時間が必要なんだ。だから現時点では、おまえの『ブス殺し』は前衛的な試みでこそあれ、だ。しかし、ブスを憎んでやまないというおまえの志は、見るべきものがあり、よしとしなければならん。しかしこの日本から、マシンガンで、ブスを一掃してしまうというほどの哲学をもっていない人民幣匯率走勢からおまえはダメなんだよ。それとも何か、『ブスの始末屋』という金看板しょって、一匹|狼《おおかみ》として一生をまっとうする正義感が、おまえにあるか?」
「……ひどすぎらあ。アイちゃんだって、街を歩いててショーウインドウの前なんか来て顔がうつると、うつむくくらいの礼儀は知ってたんだ。おれだってそこんとこはなるだけ触れないようにして、二人して生きて感覺統合訓練ゆこうとしてたんだ。二人して歩いてゆこうとしてたんだ。それをあんまりだよ、ワーッ!」
 大山金太郎玉砕せり。
 容疑者が罪の意識に泣き伏した。初陣《ういじん》を飾った留吉は清々《すがすが》しく両手をあげた。
 伝兵衛は握手を求め、留吉も固く握り返した。
「いいか、大山、誤解すんなよ。おれは基本的には、ブスだからいけないと言ってるんじゃないんだぞ。ブスがブスったれて、喜怒哀楽をあらわにするだろう、それが許せねえんだよ!」
 留吉にいいとこ横どりされ名創優品香港ていた伝兵衛も負けてはいられない。
「まあまあ熊田君それぐらいで……。なあ大山、よく聞け、そのアイちゃんってブスもだ、東京近郊の団地で内職でもしとってもらってだ、あんまり人目につかないようにして円満に処理することもできたんだぜ。ブスが人並みに選挙権を欲しがりさえしなければ狭い日本だけど、アイちゃんの座る椅子のひとつくらい用意してやれたんだ。おまえもだ、人間の原点にたちもどって考えてみるとな、殺すんなら整形手術でもしたあとで殺してくれりゃあよかったんだよ。民主主義はおまえにその誠意を求めてたんだ。おまえが、また国民の一人一人が、そこんとこキチッキチッと押さえようとしないから、何か世の中が帝国主義みたいに殺伐となってきちゃうんだ。この現場写真を見てみろ。よおく自分の名創優品香港目で確かめてみろ」
 伝兵衛は金太郎の首根っこをつかまえ、無理やり写真に顔を近づけさせた。金太郎はその殺され方の凄絶《せいぜつ》さに、『キャー』と飛びあがった。
「本人のおまえが驚いてどうすんだ……。しかし、見れば見るほどすごみがあるなあ」
「そうですね」
「テメエ、感心してる場合じゃねえだろうが、いいか、こんな品のない殺し方は、いくら戦争で負けて弱気になったからって、わが日本は、今まで一度も許しちゃいないんだよ。なんとかおまえのプライドを守ってやろうって、カメラマンもぼかしたりして努力したにもかかわらず、それでも汚物がころがってるな、くらいにしか見えないだろうが。みんなが迷惑してるんだよ。発見者の消防団員だって、あんなブスしか発見できなかったのかって、熱海じゃ村八分になってるっていうぜ。新聞だってどうやってとりあげようかって困ってるんだぜ。おれたちだけだよ、親身になって迫り来るファシズムからおまえを守ってやってんのは」
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