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書いた遠近のリメー

聖議会で糾弾できるだ


「だから言ったろう」コミエーが憮然《ぶぜん》として口をはさんだ。「殺しておくべきだったのだよ、ヴァニオン」
「わたしもそう言ったのですが、ヴァニオンに反対されました」とスパーホーク。
「理由があったのだ」とヴァニオン。
「ラドゥン伯爵の館を襲った者たちの中にレンドー人がいたというのは、何か意味があるのだろうか」アブリエルが疑念を口にした。
「深い意味はないでしょう」答えたのはスパーホークだった。「わたしはつい最近までレンドー国にいましたが、傭兵はどこにでもいるものですからね。ペロシアもラモーカンドもカモリアも、その点では同じことです。マーテルはそ外藉家庭傭工ういう中から、必要に応じて人手を集めているのでしょう。レンドー人傭兵は、エシャンド派か何かの宗教的な信条に従っているわけではありません」
「アニアスをカレロスのけの証拠はそろっているのか」ダレロンが尋ねた。
「それは無理だろうな」ドルマント大司教が印傭公司かぶりを振る。「アニアスは聖議会の議員をずいぶんと買収している。糾弾するのであれば、のっぴきならない証拠を突きつけるしかない。だが今のところ、証拠といってもクレイガーとハーパリン男爵の密談を立ち聞きしたというだけのことだ。アニアスの手にかかれば、たちまち退けられてしまうだろう。金を使ってもみ消すだけでじゅうぶんなのだ」
 コミエーは椅子の背にもたれかかり、指先で顎《あご》を叩いた。
「大司教|猊下《げいか》はいちばんの大事を指摘したと思う。アニアスがエレニアの財政を握っている限り、やつは自分の計画に惜しみなく金を注ぎこんで、聖職者の買収を続けられるわけだ。注意していないと、自ら総大司教の地位を買い取ろうとさえするかもしれん。われわれはやつの計画をさんざん邪魔してきたから、もしやつが総大司教にでもなれば、まずまっ先に四騎士団の解体に着手するだろう。なんとかアニアスを資金源から切り離せないものかな」
 ヴァニオンは首を横に振った。
「アニアスは王国評議会を牛耳っている。例外はレンダ伯ただ一人だ。票決になれば、アニアスへの国費支出が認められるのは目に見えている」
「女王はどうなのだ」ダレロンが尋ねた。「女王もアニアスの言いなりなのか。病に倒れられる前は、ということだが」
「いやいや、とんでもない。アルドレアスは病弱な国王で何事もアニアスの言うがままだったが、エラナはまったく違っていて、むしろ鑽石能量水アニアスを毛嫌いしていらした」ヴァニオンはそう言うと肩をすくめた。「だが女王は病にお倒れになり、アニアスは女王のご回復まで好きなことができるというわけだ」
 アブリエルは深く皺の刻まれた顔をしかめて、部屋の中を行ったり来たりしはじめた。
「では論理的に取るべき道は一つのようだな、紳士諸君。全力を傾けて、エラナ女王の病の治療法を探すのだ」
 ダレロンは背をそらし、磨き上げられたテーブルの板を指で叩いた。
「アニアスは抜け目のない男だ。われわれの考えなど簡単に見抜いて、妨害に出てくるだろう。それにもし治療法が見つかったと知ったら、敵はすぐさま女王を亡き者にしようとするのではないかな」
「スパーホークは女王の擁護を誓っています」カルテンがダレロンに言った。「力になってくれますよ――それにわたしもスパーホークに力を貸します」
「治療法のほうは、進展はあったのか」コミエーがヴァニオンに尋ねる。
「地元の医師はみな首をかしげている。今ほかに協力を求めているが、まだほとんど到着した者はいないようだ」
「医者というのは、必ずしも求めに応じてくれるとは限らんからな」アブリエルがさもありなんと言いたげにうなずく。「とくに王国評議会の事実上の支配者が女王の回復を喜ばないとあっては、無理もないことだろう」そう言ってしばらく考えこんでから、「シリニック騎士団はカモリア国と関係が深い。女王をカモリアのボラッタ大学にお連れして、そこの医療施設に託すことは考えてみたかな。あそこは珍しい病気の治療でよく知られているのだが」
「女王を守る封印を解くべきではないと思います」セフレーニアが反論した。「女王の命を支えているのは、今やあの封印だけなのです。それに女王は、ボラッタまでの旅に耐えられる状態ではありません」
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